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活動経緯

「医療基本法の提案〜納得のいく持続可能な医療の実現のために〜」
東大医療政策人材養成講座4期生チームが講演
2008年9月13日 の第1回勉強会、NHKで報道

第1回勉強会を9月13日(土)、東京・日本橋の製薬協会議室で開きました。この日のテーマは「医療基本法を考える」。3連休の初日でもあり、医療関係のイベントも多数予定されていたせいか、参加者はいつもより少なめの60人でした。  (文責・本間俊典)


講演する小西さん

この日、講師を務めてくれたのは東大医療政策人材養成講座の4期生、「医療基本法プロジェクトチーム」の7人の方々。キャリア官僚、ジャーナリスト、医療関係者、患者支援NPOなど多様な職業を持つ人たちです。小西洋之さん(政策立案者)が代表し、「医療基本法の提案〜納得のいく持続可能な医療の実現のために〜」と題して、共同研究の成果を講演しました。

講演内容は、以下の8項目です。
1.基本法とは何か
2.なぜ、今、基本法が必要なのか
3.医療基本法により実現される医療の姿
4.諸外国の制度
5.過去の医療基本法の検討経緯と与野党案について
6.わが国の医療改革をめぐる状況
7.まとめ、
補論:医療基本法と現在の医療問題(救急車受け入れ困難、いわゆる「たらい回し」)

まず、医療基本法が必要な理由について、@国民・患者は適正でより良い医療を受ける権利が憲法で保障されており、医療政策のプロセス参加もその一環A市場主義や規制緩和論など、現行の医療制度を取り巻く諸問題について、医療政策の基本理念を再確認、再構築するため――と説明しました。

また、2006年度に成立し医療制度改革関連法を例に挙げ、「医師不足や地域ケアの推進など、多岐にわたる課題の解決につながる」とする政府見解に疑問を投げかけ、「4疾病5事業」問題や、いわゆる救急患者のたらい回し問題を取り上げました。

「4疾病5事業」問題では、代表的な脳卒中を取り上げ、医療やリハビリ体制の地域格差を指摘。医療の範囲や基準など、本質的な部分を都道府県の「地域の実情に応じて」策定できるようにしたことから、「実質的な無責任体制になっている」と分析。「医療政策の本質的な理念がないため」と分析して、医療基本法の必要性を訴えました。


質問を聞くプロジェクトチームメンバー

また、補論として、太田凡さん(救急専門医)より、救急患者のたらい回し問題の背景には、医療法、医師法、労働基準法といったタテ割り法制の壁があることから、ここでも個別法の限界を超えた医療基本法の必要性を強調しました。

質疑応答では、参加者から「患者側の権利と同時に、責任にも触れる必要がないか」「医療基本法と現行諸法との整合性をどのようにして図るか」「法体系が重要なのか運用が大事なのか」など、活発なやり取りが交わされ、非常に中身の濃い勉強会になりました。

この日の勉強会にはNHKの取材が入り、講演や質疑応答の模様、長谷川代表世話人へのインタビューなどが、同日夕の首都圏ニュースで報道されました。当協議会の活動内容が徐々に広がってきたものと、世話人一同、意を強くした次第です。

【医療基本法プロジェクトチームの提案要旨】

<医療基本法に盛り込まれるべき原則>

・生命・健康にかかる尊厳の確保の権利(生存権)の具現化
・医療の範囲・基準の明確化と体系的整備の確保
・医療の資本形成・資源配分にかかる公共性の確保
・医療の国民・患者本位の政策確立と民主的運営の確保
・医療の持続性・効果性確保のための国民責務の確保


参加者から活発な質問意見も

<提案のまとめ>

・医療基本法制定の意義
生存権の保障など。命・健康を預かる政策は手抜き制度ではダメ。財源確保の国民新審判の前提・基準としても必要。
・性格
利害錯綜など、現状打破に向けた頂上作戦。政治決断で「寄与」→「図る」など、言葉を変える必要。制度の受益者(患者)の政策プロセスへの参画は実現が容易。
・法制化の課題など
議員立法が最有力だが、単なる理念法ではなく、厚生労働省を巻き込む必要あり。数人のキーパーソンとそれを支える実務家などが必要。