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活動経緯

浜四津(公明)、鈴木(民主)両党議員招き活発な議論
「3政党が医療政策を語る〜あなたはどの施策を支持しますか」
2008年11月22日  第2回勉強会

11月22日の第2回勉強会「衆議院解散前夜 3党が医療政策を語る〜あなたはどの政策を支持しますか」は製薬協会議室に約80人が参加しました。医療基本法の内容や策定プロセスが具体的に議論されました。(文責・本間俊典)

前回(9月13日)、東大医療政策人材養成講座4期生チームの方々に医療基本法の制定に向けた提言を解説してもらいましたが、法律制定のカギを握る主要政党はどう考えているのか、医療政策の基本理念について聞こうと自民、公明、民主の3党の医療政策担当者に声掛けしました。

勉強会の趣旨をご理解いただいた公明の浜四津敏子氏(参院議員)と民主の鈴木寛氏(同)が駆けつけてくれました。ただ、自民党議員との調整がどうしてもつかず、冒頭で長谷川世話人代表が陳謝しました。最大政党の自民から出席をいただけなかった点につきましては、世話人一同からも参加者に改めておわび申し上げます。

【五つの事前質問項目】

勉強会に先立って、お2人には基本質問を5項目出し、それに答える形で進めました。5項目は以下の通りです。

1.理念 医療基本法の制定の必要について、どう思われますか? また、日本は社会保障において、「助け合い(相互扶助)」を重視すべきですか、それとも「自己責任」を重視するべきでしょうか?
2.骨子 医療基本法に必ず含まれていなければならない要素は何だと思いますか?
3.患者 医療基本法においては、(1)患者が受ける治療(質、アクセス、コストなど)、(2)患者の医療政策決定参加−−などについて、どのようなことが盛り込まれているべきでしょうか?
4.医療者 医療基本法においては、(1)医療従事者の確保、(2)医療体制の充実−−などに関して、どのようなことが盛り込まれているべきでしょうか?
5.費用 持続可能な医療体制を構築するための「負担と給付の問題」「必要な医療財源の確保」に関して、どのように国民全体で情報を共有し議論していくプロセスが必要だと思いますか? それは医療基本法において、どのように盛り込まれるべきでしょうか?

【浜四津議員の講演】

浜四津議員

浜四津氏は「個人の考え」として断ったうえで、質問項目に基づき、ていねいに党の基本的な考えを以下のように解説してくれました。
1.医療基本法の制定は不可欠。自助を基本としながら共同体による共助、さらには公助というバランスの取れた組み合わせを指向する
2.がん対策基本法が一つのモデルになるが、八つの骨子がある。それは、
(1)医療は患者のためにあることを明確化(2)EBM(根拠に基づく医療)の推進(3)国や自治体の政策決定過程への患者参加の明確化
(4)医師ら医療提供者の責務
(5)国や自治体の役割の明確化、民間との役割の明確化
(6)医師の育成・教育政策
(7)患者の責任
(8)健康教育など。

3.患者参加を法律で義務付ける必要があるが、それには国民の協力、教育も必要
4.診療科や地域ごとの医師の必要数を割り出し、学会が責任を持つ。また、病院間の診療科のダブりなどを調整するため、都道府県に強い調整権限を与える。また医師も人間である以上、働く場の環境整備は喫緊の課題
5.医療の実を上げると同時にEBM(根拠に基づいた医療)へ誘導する配分が必要であり、負担と給付については選択肢を国民に示して判断を仰ぐ必要がある。

【鈴木議員の講演】

鈴木議員

一方、鈴木氏は党としての考えを次のように述べ、幅広い視点と大きな政策を含む内容になりました。

1.民主党は医療費増加をめざす。政権を奪取したら、介護も含む医療費を1.9兆円、政権奪取後は対GDP比で現在の8.0%からOECD平均並みの9.4%まで引き上げる。医療需要の変化を再検討しているところ
2.今の最大の問題は医療崩壊だが、今後、高齢化が最も進む神奈川や東京など大都市圏で需給ギャップが起こる。10〜20年後を見据えて、同じ失敗を繰り返してはならない
3.議論すべきはガバナンスの問題。医療の基本は相互扶助だが、自助、互助、公助のバランスをどう取るかが課題

4.医療基本法については教育基本法と同じ思考方法が考えられるが、患者や医療関係者だけでなく、国民全体を巻き込んだ議論が必要。また、国連やWHOなどとの国際的な整合性も必要になる。官僚の専門性で追いつける時代ではなくなり、中央主導で決める構造自体が破綻している。医療基本法の制定がそうした議論のきっかけになる。

【パネルディスカッション】

この後、浜四津、鈴木両議員に伊藤雅治、海辺陽子両世話人が加わり、埴岡健一事務局長の司会でパネルディスカッションに入りました。

埴岡氏の「医療基本法を党として推進しますか」という単刀直入の質問に、両議員からは明快なイエスの答えが返ってきました。

世話人側からは、伊藤氏が「国民的合意を形成するにはさまざまな当事者が集まって議論する過程が必要であり、与野党は政争の具にすべきではない」、海辺氏も「医療には普通の人がこうあるべきだと思うことと全く違う方向に議論が行ってしまう不思議なことがある。そうならないよう、根本となるもの(医療基本法)が必要だ」などの意見が相次ぎました。

これに対して、両議員とも「早急に党部会の意見をまとめ、自民党にも働きかけたい」(浜四津氏)、「党内と国会と分けて議論したい。議員立法の可能性もある。いかに政争の具にしないかは重要で、マスコミも対立構造をあおらないでほしい」(鈴木氏)など、前向きな反応や問題点の指摘がありました。

時間切れで、会場参加者との質疑応答はカットせざるを得ず、申し訳ありませんでした。しかし、両議員とも医療基本法の制定には前向きな姿勢を明快にしており、今回は自民党議員が欠けたものの、政治の分野でどんな動きや考え方があるのかを知ることができたことは有意義でした。