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活動経緯

自民、公明、民主、共産の4党議員招く
医療基本法制定に4人とも前向き
2009年5月23日 第4回勉強会

 第4回勉強会を5月23日、東京・全社連研修センターをお借りして開き、患者団体、関係団体などから65人が参加しました。今回は「医療基本法勉強会シリーズ第4弾 各党の医療政策に患者の声を届けよう!」をテーマに自民、公明、民主、共産の国会議員を1人ずつお招きしました。熱い議論の結果、患者の声・協議会の求める「医療基本法」の制定に超党派で協力することを約束していただきました。(文責・本間俊典)


左から小池、鈴木、高木、加藤の各氏。右は埴岡世話人

 国会議員と医療基本法について議論するのは昨年11月22日に開いた第2回勉強会に続いて2度目。自民党の加藤勝信衆議院議員、公明党の高木美智代衆議院議員、民主党の鈴木寛参議院議員、共産党の小池晃参議院議員の4人が、多忙ななか駆けつけてくださいました。埴岡健一世話人(日本医療政策機構理事)がコーディネーターになり、パネルディスカッションを展開しました。

 まず、海辺陽子世話人(癌と共に生きる会副会長)が患者の声・協議会参加団体メンバーへのアンケートなどに基づく医療基本法の4本柱を説明。1.日本国憲法第25条の生存権を具体化する、全ての人への質の高い医療の提供、2.医療が公共のものであるとの認識に立った資源の確保と配分、3.EBM(根拠基づいた医療)に則った最適・最善の医療の確保、4.医療政策決定過程への国民(患者、家族、患者支援者など)の参加――によって、医療に関するあらゆる課題がカバーできることを解説しました。

 続いて、各党の取り組みについて、順番にお話を聞きました。そのダイジェスト版をご紹介します。

【基本法制定への基本的な考え】

埴岡:まず、医療基本法を制定することへの基本的な考え方について。

加藤氏:現在の医療は医師不足を含め大きな課題を抱えている一方、社会保障国民会議のなどのシミュレーションでも医療と介護の負担は膨れ上がる。あるべき医療理念の再構築は大事な課題だが、財源や介護のあり方も含め、今のような政策決定を続けていくと社会的弱者にひずみが行ってしまう。

高木氏:医療基本法制定の動きには、心から賛同する。今後、日本はさらに高齢化し、医療をどう持続可能なものにしていくか、国民的合意を得なければならない。長寿医療制度も当事者不在だった。財源論からも法律制定は不可欠であり、推進したい。

鈴木氏:今回のインフルエンザ騒動もそうだが、感染症にしても未曾有の高齢社会にしても、誰も経験していない医療課題に対応しなければならない。そのためには、行政、患者、政策担当者、専門家、メディアなど、全関係者が状況と情報を分け合い協働しなければならない。そのためには情報を共有して協働することが必要であり、医療基本法はその方向性に合う。

小池氏:患者の権利を明確にする法律の必要性は以前から主張していた。医療提供側を規制する法だけあって、受ける側に法律のないのが、日本の医療体制の特徴であり弱点だ。患者の権利を明確にすることで、医療のありかたを根本から見直すことは有意義だ。がん対策基本法がモデルになるだろう。このような動きは時宜にかなったものだ。


討論に聞き入る参加者

【四つの柱で包含できるか?】

埴岡:私たちの提唱する4本柱で概ね、全てを包含できると思いますが、どうでしょうか。

加藤氏:市場原理ではない、医療体制の確保と配分を確立する必要がある。患者参加については、がん対策基本法が一つのモデルになる。あの法律で協議会に患者代表が入ったことを、行政の人も評価している。協議会というのはコンセンサスを形成することに意味があり、これまでは患者を代表する人は入っていなかった。しかし、やってみたら確実に成果が出て、評価されているようだ。

高木氏:きちんとした党の見解をまとめたいと思っており、4本柱については認識を共有している。個別にみると、医療基本法である以上、憲法13条と25条の理念は入れないと意味がない。世界に誇る国民皆保険制を将来にも維持する拠り所となるだろう。「公共財」であることを明確にして、医師にも一定の責任を負ってもらう、都道府県に強い調整力を与える、などが検討される。現在はかなりの縦割になっており、そこに基本法で横串を通すことは大いに意義がある。それから、給付と負担との関係を国民がどう考えるかを明確にしないと議論は進まない。その際、社会的弱者への特段の配慮は必要であり、診療報酬もEBMを誘導する必要があるだろう。4番目の柱は、医療が当事者意識の最も遅れた分野だと考えると、政策決定過程に患者さんが入るのは当然であり、患者さんの成熟も必要だ。学校教育で医療教育を推進することも必要だろう。

鈴木:戦後60年が過ぎ、根っこから変えなければならないものが続出しているということか。医療基本法に憲法25条を打ち出していくのは当然だと思う。そのうえで、あえてテクニカルなことを申し上げると、医療基本法なのか、医療・介護基本法なのか、健康基本法なのか、どういう順番でいくのかが今後の課題になるだろう。それから、誰が担い手になるのかについて、職権主義と当事者主義という考え方がある。今までは国家主体で、国に要求してやってもらうという職権主義が一般的だった。しかし、全構成員で原則を再確認したうえで、みんなで了解したんだから、あなたも協力して下さいねという方式が当事者主義だ。1億3000万人の日々の行為について、いちいち権利の確保を政府に求めるのは限界がある。「民民」の努力を念頭に、立案しなければならないだろう。EBMも大事だが、それと同じくらい「Evidence Based Policy Making」も大切であり、根拠に基づく政策決定の実現が必要だ。4本目の柱については、私が常々言ってきたことだ。医療の場合、最大の当事者は患者であり、医療者らも政策決定に加わるのは当然。ただし、色々な利益をどうやって代表するのか、利益を抽出することは難しい。

小池:4本の柱は「肝」となる適切なものであり、70年代に医療基本法が検討された時以上に、必要性は増している。社会的弱者に対するアクセスを確保することが大切ではないか。公的保険があるのに窓口負担が3割だったり、国民健康保険の危機も深刻。難病や慢性疾患の予算は毎年予算を決めるという不安定な仕組みだ。欧州のように、恒常的に確保する必要があり、そうしたことのためにも基本法が必要だと思う。 政策決定過程に国民が参加するというのは、日本の法体系の根本欠陥を正すためにも重要であり、中央社会保険医療協議会などにおいて学識経験者だけでなく患者代表らの参加が必要だ。

【今後の取り組みについて】

埴岡:今後、具体的にどう取り組んでいくか、個人的な考えでも結構ですから聞かせてください。

加藤:残念ながら自民党の中で医療基本法そのものの議論はまだない。医療のあり方の議論は必要であり、党を離れたような言い方になるが、基本法を議論しないと政党として認めてもらえないような機運が盛り上がるといい。なぜ今必要なのか、こうした場で議論してもらうと、党でも議論しやすくなる。

高木:わが党で、いま積極的に考えているのは浜四津、福島、私の3人だが、近いうちに党内できっちりと位置付けたい。マニフェスト作成中で、そこに入れるべく準備したい。各党共通の議員立法という形で出すのが一番良い方法だと思う。これが国民の命と健康を守る政治の使命だと思う。

鈴木:良い基本法にするために、医療基本権が損なわれた人たちの権利の実現につながるか、医療費の対GDP比をどこまで盛り込めるか、といった観点が必要になる。基本法の中で縦割り行政の問題を解決していかなければならない。民主党の中ではすでに「患者の権利法」というコンセンサスができており、必ず公約に入れたい。

小池:この目的からすれば、やはり政策転換が必要になる。今度の選挙は医療について大論戦する選挙にしたい。同時に、役に立つ基本法ということになれば、患者の声を反映させることで最低限の担保になると思う。超党派で実現すべき課題だ。