
中央社会保険医療協議会会長 遠藤久夫・学習院大教授
第9回勉強会は3月27日、全社連研修センターで開き、講師に中央社会保険医療協議会(中医協)会長の遠藤久夫・学習院大教授をお招きし、2010年度の診療報酬改定にまつわる中医協での議論の模様を話していただきました=写真。患者会にとって関心の高い診療報酬の話を、まとめ役の「大御所」から聞けるとあって、参加者は70人を超え、中身の濃い勉強会となりました。(文責・本間俊典)
遠藤氏は、中医協の組織、診療報酬の決定メカニズム、診療報酬の年次推移、国民所得との関連などについて説明。10年度の議論で取り上げられた重要課題について、ていねいな解説を加えました(表参照)。
全体改定率 |
+0.19%(約700億円) |
診療報酬(本体) |
+1.55%(約5700億円) |
医科 |
+1.74%(約4800億円) |
歯科 |
+2.09%(約600億円) |
調剤 |
+0.52%(約300億円) |
薬価など |
▼1.36%(約5000億円) |
【2010年度診療報酬改定の概要】
政権交代によって、10年度の診療報酬は10年ぶりにプラス改定され、それが中医協の議論にどのような影響を及ぼしたかが注目されました。
これについて遠藤氏は、1.改定率に差を設けて配分を変えた、2,日本医師会の推薦委員がはずされるなど、委員の交代があった、の2点を挙げました。
そのうえで、「政権交代によってどこが変わったかといえば、この2点以外、大きな違いはそれほど感じなかった。当然のことながら、大臣や政務官から“こういう方向の議論をしてほしい”といった要請なども一切なかった」と証言。
ただ、「委員の交代により、多様な発言があっておもしろかった。従来は行われていた診療側の“事前調整”がなかったため、医療政策などについて自由な議論が展開され、時間的にはタイトだったが、本来の審議会らしい議論になった」と評価しました。
さらに、中医協審議における患者代表の立場については、「私たちは当然、議論の際に患者の立場ということを念頭に置いているので、改めて問われるとなんとも答えにくい。私のような公益委員は患者の代表ではないのだろうか。支払い側委員も皆さん、常に“患者代表”を自認している」と説明。
現代の患者の置かれている立場については、「(孤独に戦う)ドン・キホーテなのか、(権威の象徴である)水戸黄門の印籠なのか」と並べ、「患者さんの声は急速に(影響力が)高まっており、私の印象では水戸黄門の印籠になりつつある」と指摘しました。
ただ、「特定の疾患の患者代表が、特定の医療政策について意見を述べるのは当然としても、医療政策全般について話すとなると、(私たちのような)有識者とどこが違うのか、という疑問がある。さらに、患者団体の影響力はご自身が認識している以上に増大しているので、(さまざまな勢力に)利用されないよう、気をつけていただきたい」と注意を促しました。
・救急、産科、小児、外科などの医療再建
(救命救急入院料、外保連試案を活用した手術料見直しなど)
・病院勤務医の負担軽減
(医療従事者の増員に努める医療機関への支援、看護補助者の配置評価など)
・充実が求められる領域を適切に評価する視点
(がん、認知症、感染症、肝炎など)
・患者からみてわかりやすく納得でき、安心・安全で、生活の質にも配慮した医療を実現する視点
(明細書の原則無料発行、再診料・外来管理加算の見直しなど)
・医療と介護の機能分化と連携の推進などを通じて、質が高く効率的な医療を実現する視点
(急性期入院医療、在宅医療などの推進)
・効率化の余地があると思われる領域を適正化する視点
(後発医薬品の使用促進、治療効果が低くなった技術の評価など) |
【中医協で議論された重点課題】
|