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活動経緯

2010年9月4日
総会で09年度報告と10年度計画を承認
盛況!シンポジウム「今こそ医療基本法を」

 第3回総会・記念シンポジウムは9月4日(土)、東京・全社連研修センターで開かれました。総会は世話人会が提出した全議案が原案通り承認されました。総会後の記念シンポジウム「今こそ医療基本法を」では、日本医師会などから同法の制定に向けて活躍中の識者3人をお招きし、熱のこもった論議を展開。集まった約90人の参加者からも熱心な質問が飛ぶなど、“キックオフ”シンポジウムにふさわしい内容になりました。なお、10月30日にも医療基本法制定推進フォーラム主催のシンポ「医療基本法の制定を」が開かれます。(文責・本間俊典)

総会

総会は、正会員19団体(昨年から2団体減少)のうち出席9団体、委任状4団体、欠席6団体。長谷川三枝子代表世話人は「2年間の活動の結果、患者の声・協議会も徐々に社会の認知を受けつつあります。3年目はさらに充実した活動内容にし、会員を増やしたい」と挨拶しました。
議案は2009年度事業報告と同決算・監査報告、2010年度事業計画と同予算、役員選出の5議案。埴岡、海辺両世話人から説明があり、どれも原案通り承認されました。役員については、世話人は7人(昨年から辞退により1人減)が再任されました=写真。

【09年度の総括】
(1) 年間テーマを「医療基本法の制定」と定め、第8回勉強会では、正会員団体代表者らと国会議員会館を訪れ、各党議員・秘書の方々と意見交換しました。この結果、8月の参院選では公明、共産両党がマニフェストに「医療基本法の制定」を盛り込むなど、一定の成果を得ました。
(2) 09年度が10年度診療報酬の改定時期だったことから、第7回勉強会に勝村久司中医協委員、第9回勉強会に遠藤久夫中医協会長をお招きして、情報開示の進展状況や診療報酬決定のプロセスなどについて、興味深いお話をいただきました。

【10年度活動のポイント】
(1) 引き続き、「医療基本法の制定」に向けた活動を継続します。シンポジウム「今こそ医療基本法を」(9月4日実施済み)の開催、医療基本法制定推進フォーラム主催のシンポ「医療基本法の制定を」(仮題、10月30日予定)などの場を通じて、国民的な議論の盛り上げに努めます。
(2) 09年度に正会員、賛助会員、医療従事者ら医療ステークホルダーの交流会を予定しましたが、実施には至りませんでした。引き続き、10年度の目標のひとつと考え、情報交換の場として実現に努めます。
(3) 世話人会を年12回程度予定しています。ただ、依然として世話人を中心とする“手弁当活動”の見通しで、専用事務局員も置けません。どなたか、お手伝いしていただける方を探しています。
・2009年度事業報告(PDFファイル)
・2010年度事業計画(PDFファイル)

設立記念シンポジウム「今こそ医療基本法を」

【パネリスト】
横倉義武氏(日本医師会副会長)
藍原寛子氏(東京大学医療政策人材養成講座<HSP>4期医療基本法チーム)
鈴木利廣氏(「患者の権利法をつくる会」世話人)
長谷川三枝子(患者の声・協議会代表世話人)
司会:埴岡健一(患者の声・協議会事務局長)


「医療基本法」の必要性をそれぞれの立場から訴えたパネリスト4人

当協議会の長谷川代表を含め、4人のパネリストによる熱のこもった発表が行われました。日本医師会の会内委員会は「患者をめぐる法的諸問題について」、HSPは「医療基本法の提案」、患者の権利法をつくる会は「患者の権利法要綱案」という形で、それぞれが私案や提言を発表しています。医療基本法については、過去40年以上にわたって制定の動きが何度かありましたが、現在に至るまで日の目を見ていません。
「医療基本法に関連した官民の動き(PDFファイル)」参照)。
シンポの前半は、各氏がそれぞれの案を解説。横倉氏は医療側の立場から、「現行の医療関連法が旧態依然としたままで、医師と患者の信頼関係を阻害しており、医療政策の根本原理を明示する医療基本法が必要」と強調しました。
藍原氏は政策立案者、医療提供者、医療ジャーナリスト、患者支援者の四つのステークホルダーで交わした議論の結果として、「医療基本法は憲法13条、同25条から導き出され、生命・健康に係る生存権の具現化、適切で必要な医療がどの地域でも受けられる、必要な医療従事者や病院が公共性をもって確保される、などの原則が盛り込まれるべきだ」と述べました。
鈴木氏は、医療事故事案を踏まえた弁護士や医師らの検討結果として、「(医師に)与えられる医療から、(患者が)参加する医療へ」転換すると同時に、医療の公共性を明確にする必要性を強調しました。
長谷川氏は、当協議会が重ねてきた勉強会を紹介しながら、患者・家族の立場から「医療政策決定過程への国民の参加」の必要を強く訴えました。
【医療の基本法に関連する法案、提言の比較(PDFファイル)】参照)。
 
休憩をはさんで、後半は埴岡氏の司会でディスカッションに移り、埴岡氏は医療の現状について、各自の見解を聞きました。
  「医療崩壊といわれる状況が産科、小児科と広がり、医療の不確実性を理解してもらえない事例が増えてきた。医療関係者の反省も必要」(横倉氏)、「“医療崩壊”という言い方は強過ぎるが、医療の再建は必要。救急患者の受け入れ困難事例など、対症療法ではない基本法が要る」(藍原氏)、「患者の権利は、基本的に、医療界に対してではなく、政府に向けられたものであり、権利を阻んでいるものを取り払わなければならない」(鈴木氏)、「医療側と患者側の信頼関係がなければ医療は成立しない。その点では両者とも変わってきているが、地域格差、医師の偏在、高額な新薬など、問題も依然として多い」(長谷川氏)など。


90人の参加者が討論に熱心に耳を傾けた

また、埴岡氏は各自の提言類を今後どう生かすか、聞きました。
「報告は委員会の結論であり、医師会全体の決定ではない。法案にするには共通の理解が必要で、意見を統一できるかどうかがカギ」(横倉氏)、「市民活動を継続する。72年当時、医療基本法が与野党案とも廃案になったが、国民的議論がなかったことが要因の一つだった点を教訓にしたい。ステークホルダーの連携が必要」(藍原氏)、「立法府に要請したい。今度の臨時国会で国会議員を巻き込んで、“仕込み”を図りたい」(鈴木氏)などでした。
議論を聞いた参加者からは、「タイでは医療基本法にあたる法律ができ、経済レベルの割に医療はうまくいっている。患者を含む国民、法律を制定する政治家、ジャーナリストらプロの“三角形”を構成して議論した結果だ。日本は財源問題などで、グランドデザインのない対症療法で過ごしてきた。今こそ医療基本法が必要だ」(大学教授)、「今や基本法のないのは医療分野ぐらい。政治も超党派で実現に努力したい」(国会議員)など前向きな意見が目立ちました。
一方、参加者アンケートなどでは「法律が必要だとは思うが、(シンポは)少し抽象的でわかりにくかった」「基本法の必要性にだけ注目すると、中身の検討が不十分なまま早期制定が最大目標になりかねない。ステークホルダーと時間を掛けた論議が必要」といった貴重な意見、感想が寄せられました。