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活動経緯

2011年9月10日 第15回勉強会
「ドラッグ・ラグ」で近藤、黒川両氏が講演
患者側2人も実情を訴え

 第15回勉強会は10日午後、東京・品川の全社連研修センターで開かれ、テーマの「ドラッグ・ラグ」に会員ら約60人が集まって勉強しました=写真。講師は独立行政法人、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の近藤達也理事長、慶応大学薬学部の黒川達夫教授のお二人。
  まず、患者側から「患者の声を医療政策に反映するあり方協議会(患者の声・協議会)」の会員2人が話をしました。
村上紀子・PAHの会理事長は希少難病の肺高血圧症の治療薬について、すでに世界で使われている治療薬がいくつかあり、日本の患者にも有効と考えられるにもかかわらず、「海外の治験データだけでは安全性を確保できない」として政府が承認しない事例を挙げ、「この間にも死者が相次いでおり、時間がない。新薬の早期承認を」と訴えました。
  また、海辺陽子・がんと共に生きる会副理事長は、同会のドラッグ・ラグに対する取り組みや、米FDA(食品医薬品局)の患者参画システムへの取材結果を報告しながら、「新薬承認が遅ければ安全なのか」「薬の副作用はすべて“薬害”なのか」と日本のシステムに大きな疑問を投げ掛けました。
  これを受けて、近藤氏は「PMDAのドラッグ・ラグ解消への取り組み」と題して、医薬品の認可事業に携わっている「現場」のトップとして、問題の解消に向けた承認審査体制などの取り組みぶりを解説しました。
  政府は2007年度から5年間で、新薬発売までの期間を2.5年短縮する
目標を設定していますが、近藤氏は「目標は確実に進展しており、ドラッグ・ラグの問題は急速に解消に向かっている」と話すと同時に、「新薬の審査、救済、安全のトライアングル体制で国民の安全は守られており、これは世界に誇る薬事システム」と強調しました。
  黒川氏は、医薬品の適応外使用の規制緩和に踏み切ったいわゆる「二課長通達」(1999年)など、厚生労働省を中心にしたこれまでの公的な一連の努力過程を解説。
  そのうえで、「ドラッグ・ラグには様々な様相があり、ひとまとめにした議論はベストではない」「薬への反応は人種差より個人差が大きく、日本はどこまで自前で治験などをやるのか、他国の状況も踏まえて決めるべきだ」と話しました。

後半のパネルディスカッションでは、埴岡健一世話人の司会で参加者からの質問に4人が各自の考えを述べました。患者側は副作用などのリスクをどう引き受けるべきか、製薬企業は開発をどう優先付けするのか、といった問題について活発な意見交換が行われました=写真。
一方、この日の参加者からは、遠藤久夫・前中央社会保険医療協議会会長(現社会保障審議会医療保険部会長)が2010年度診療報酬改定において、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」と呼ばれる薬価維持制度を導入し、製薬企業がドラッグ・ラグ解消に取り組むインセンティブを設けたこと。厚労省の鷲見学・がん対策推進室長が、来年度に向けたがん対策推進基本計画の見直しの中で、ドラッグ・ラグ解消の議論を始めたことなどが披露されました。

総会は原案通り承認

勉強会に先立って開かれた患者の声・協議会の2011年度総会(第4回総会)では、事務局から10年度事業報告と収支決算報告・会計監査報告、11年度事業計画と収支予算が提案され、原案通り承認されました。
また、役員選出では海辺陽子さん(がんと共に生きる会副理事長)が世話人を離れ、新たに村上紀子さん(PAHの会理事長)、武川篤之さん(日本アレルギー友の会副理事長)、牧田篝さん(CMCネットワーク いうりん代表世話人)の3人が世話人に就任、10人体制で陣容拡充を図りました。監事を務めていただいた大平さんの代わりに内田絵子さん(ブーゲンビリア理事長)に新監事を引き受けていただきました。
  11年度事業は「ドラッグ・ラグ」勉強会でスタートしましたが、総会では勉強会の充実と同時に、1.患者の声・協議会を医療政策の提言団体としてどう体制整備するか、2.患者団体を中心にした正会員をどう増やすか――などが今後の課題となりました。

・2010年度事業報告(PDFファイル)
・2011年度事業計画(PDFファイル)

なお、11年度の役員は以下の通りです。

長谷川三枝子(代表世話人、再)
伊藤雅治(副代表世話人、再)
大平勝美(副代表世話人、再)
埴岡健一(世話人、再)
松村満美子(世話人、再)
本間俊典(世話人、再)
村上紀子(世話人、新)
武川篤之(世話人、新)
牧田篝(世話人、新)
内田絵子(監事、新)
【退任】海辺陽子(世話人)、大平勝美(監事)