Top > 活動経緯 > 第19回勉強会

活動経緯

2012年7月14日 第19回勉強会と総会
「転換期の難病対策」に意見、提言
当会名称を「患者の声協議会」に変更

 7月14日、東京・品川で第19回勉強会「転換期の難病対策を考える」を開き、患者会、製薬企業、メディアなどから約50人が集まりました。それに先立つ2012年度総会では会の名称を「患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会」から「患者の声協議会」に変更することを決めました。
  勉強会では、厚生労働省の政策担当の中心人物、山本尚子・健康局疾病対策課長を講師に迎え、「我が国の難病対策〜課題と展望」と題して基調講演していただきました=写真。

日本の難病政策は1972年に制定された「難病対策要綱」が始まり。難病の中の「特定疾患」に対する医療費助成、特定疾患を含む「難治性疾患」の治療・研究を2本柱にスタートしました。
しかし、患者側の要望や医学・治療技術の発展に伴い、対象疾患は徐々に増え、現在は特定疾患が56疾患、難治性疾患は130疾患にのぼり、約70万人が医療費助成を受けています。国の難病予算は12年度で医療費助成350億円、研究費100億円ですが、医療費助成は都道府県負担分を合わせると1300億円超にまで膨らんでいるのが現状です。
こうした財政事情の一方で、対象疾患が限られるという「不公平」も生じており、対象外の難病患者らの不満が高まっている。また、医療保険制度に上乗せされる他の公費負担制度とのアンバランスも拡大するなど、発足から40年経った難病対策は「制度疲労」が目立つようになり、新たな制度設計が不可避な情勢です。
このため、厚労省の検討チームと厚生科学審議会の難病対策委員会で、治療、研究、福祉を総合した法制化も視野に入れ、制度構築に向けて議論を重ねているところです。
山本課長は、これらの経緯を説明したうえで、課題として@難病対策の抜本改革の必要性A患者・家族の孤独な長い闘いを社会が支援B難病になっても絶望しないで生きられる社会づくり――の3点を挙げ、「そのためには広く国民の理解と共感を得る必要がある」と強調しました。
この後、日本難病・疾病団体協議会(JPA)の伊藤たてお代表理事が指定発言。「難病対策は単なる弱者対策ではなく、成熟国家の日本が抱えて行かなければならない課題。問題は多岐にわたるが、その根底には医療制度や社会保障制度の欠落部分があり、先進国レベルでは遅れている。公平、公正、平均値といったモノサシだけで議論するのは問題があり、社会保障制度全体の中で考えるべきではないか。少なくとも、現在の制度から後退させてはならない。また、日本は行政とアカデミズムの優位性が高く、患者当事者の声を反映させるシステムが弱い。そこも改善すべき課題だ」と指摘しました。

パネルディスカッションは埴岡健一世話人が進行役となり、山本、伊藤両氏と患者の声協議会から長谷川、本間俊典の両氏を加えた4人が発言。難病患者・家族のQOL(生活の質)、医療費助成・研究対象疾患の見直し、他の疾病対策とのバランスなどについて、参加者の意見も交えて活発なやり取りを交わしました=写真。
「難病対策は日本の医療・介護の基盤であること、当事者自らが声を出すこと、就労支援の3点が重要」「医療費助成をめぐって患者同士が“パイの取り合い”をするようなことがあってはならず、仮にそれがあるとすれば制度の貧困が原因ではないか」「治療研究が進んだおかげで、QOLが格段に向上した疾患もある。治療研究の継続は絶対に必要」「公平性の観点から疾患別ではなく、重症度区分、所得制限などを本格導入するのも必要ではないか」などさまざまな意見が出ました。

問題の根が深く、関連分野が医療、研究、福祉と多岐にわたっていることから、“時間切れ”の感は免れませんでした。

12年度総会で「患者の声協議会」に名称変更

勉強会に先立って開かれた患者の声・協議会の2012年度総会(第5回総会)では、事務局から11年度事業報告と収支決算報告・会計監査報告、12年度事業計画と収支予算が提案され、原案通り承認されました。

また、協議会名について、これまでの「患者の声を医療政策に反映するあり方協議会」から「患者の声協議会」に変更することも承認されました。変更理由は、創立から4年経ち、医療政策の「あり方」や「反映させる」ことだけでなく、患者の声を広く社会に訴え、還元していく必要があるとの考えからです。

11年度の事業は「医療基本法」制定に向けた勉強会などを4回実施しました。12年度は「難病対策を考える」でスタートしましたが、「医療基本法」などは引き続きフォローすることになりました。

なお、12年度の役員は長谷川三枝子代表世話人をはじめ、10人全員が再選されました。

2011年度事業報告(PDFファイル)
2012年度事業計画(PDFファイル)