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活動経緯

2012年11月17日 第20回勉強会
「医療政策に患者・市民はどう関わるか」テーマに
審議会委員と厚労省担当官が「患者代表」について議論

 11月17日、東京・全社連研修センターで第20回勉強会「医療政策に患者・市民はどう関わるか――審議会の現状と展望」を開き、悪天候の中を各患者会の代表など40人を超える参加者が集まりました=写真。

 今回は、ゲストスピーカーに東京SP研究会の佐伯晴子代表、医療情報の公開・開示を求める市民の会の勝村久司代表世話人をお招きしました。佐伯さんは社会保障審議会医療部会、勝村さんは中央社会保険医療協議会(中医協)の委員経験者で、現在も厚生労働省等の各種審議会・委員会などで「患者委員」として活動しています。

 佐伯さんは、欧州滞在時に、医療従事者だけでなく患者を含む一般市民も医療に参加して、患者のQOL(生活の質)を高めることが常識になっていることを知り、帰国後に日本にはそうした社会体制のないことを痛感。患者の立場になって情報発信する「模擬患者」活動を開始したいきさつを披露しました。

 そのうえで、審議会委員として心掛けている点として、@医療を受ける立場の安心・納得を第一に、同時に納税者・保険料納付者の理解・納得を考えるA政治など偏りのないニュートラルな立場で臨み、長期展望を忘れないB素朴な疑問などの背景には本質的な課題が横たわっており、意見書を作成して会議資料に残すなど、疑問を表明しておくC円滑な議事運営に協力しつつ、非医療者ならではの指摘や疑問を呈する――などを挙げました。

 勝村さんは、1990年に医療過誤で出産直後の女児を亡くした体験から、被害の再発防止に向けた活動が発端だったことを説明し、「当時は患者側への情報がなかった」と振り返りました。そのため、中医協委員に就任してからは患者代表として「医療費明細書のレセプト並み開示」などの情報公開を求め続けました。

 また、10年以上前に初めて公立病院の医療事故外部監査委員になった際に、患者代表はまず、@議事録の公開A患者代表の複数配置B事前レクCメディアへの公開――などを求めることの必要性を強く実感したといいます。

 これに対して、行政側からお招きした厚労省医政局総務課の佐々木孝治保健医療技術調整官は、同省の医政、健康、保険各局などの審議会や検討会には現在、30人を超える患者側委員がいることを指摘。@医療政策は医療従事者が中心になりがちな一方、患者側委員の発言は行政の意思決定に欠かせないA行政サイドでは気づきにくい、患者サイドの考えを本音ベースでぶつけてもらうという意味があるB委員にはバランス感覚を備えた人になってもらい、医療側対患者側といった対立構図だけではない運営を心掛けているC委員の選任には明確な基準があるわけではないが、とかく「実績」のある人に偏りがちで、その点は今後の課題――などの率直な説明がありました。

 難病対策委員会などの委員として活躍している日本難病・疾病団体協議会(JPA)の伊藤たてお代表理事が指定発言。「患者家族の希望などを背にしている部分では、はっきり“違う”と発言することもある。総じて、医療側委員の医師らの専門家と対等に議論するのはむずかしい。言いっ放しにならないようにとは心掛けている。事務局(行政)が自分たちでは言い出しにくいことを、賛同できる内容であれば言う場合もある。いずれにしても、発言には神経を使う」と話し、舞台裏の一端を披露しました。

「患者横断の組織が必要」などの提案も

 埴岡健一当協議会世話人の進行で始めたディスカッションでは、参加者から活発な意見が出ました。中医協会長経験者の遠藤久夫学習院大教授からは、「患者会をベースにした委員の発言は、その疾患に関しては力になれるので、大いに発言すべきだと思うが、医療システム全般の話になると、患者会ベースではむずかしいことも多く、その辺は微妙なところだ」との注目発言がありました。これをきっかけに、熱心に意見が交わされました。

 そのほか、「医療財源問題などでは、患者会を離れた議論が必要」「日本の患者会は疾病ごとに構成されているため、患者に共通する横断的テーマを扱える団体が少ない」「委員の選任を特定の患者会などに頼るのは行政の怠慢かもしれないが、現状ではどこかで“恣意性”が働くのはやむを得ない」など活発な意見が出されました。一部参加者からは「簡単に方向性の出るテーマではないから、議論の“続編”が必要」との声も漏れていました。

 なお、次回勉強会は総選挙後の来年2月、「医療基本法」のフォローアップを予定しています。