
日本医師会(横倉義武会長)が主催する「医療基本法(仮称)制定に関するシンポジウム」が22日、東京・日本医師会館で開かれ、会員の医師ら約300人が参加しました。講演者の1人に患者の声協議会の伊藤雅治・副代表世話人が招かれ、患者の立場から基本法制定の必要性を強く訴えました=写真。
同医師会は医事法関係検討委員会が3月、「医療基本法の制定に向けた具体的提言」を発表しており、この日のシンポはそれを受けて開いたものです。
前半は小西洋之・参院議員(民主党政調会長補佐)▽大井利夫・日本病院会顧問(同検討委副委員長)▽伊藤氏▽田中秀一・読売新聞東京本社論説委員の4人が講演。古川俊治・参院議員(自民)と吉岡てつを・厚生労働省医政局総務課長が指定発言に立ちました。
伊藤氏は、日本の医療政策の決定過程が医療提供側中心の仕組みになっており、患者側の意向が容易に反映されない点を指摘。「患者も参画する制度に向けて根本的な見直しが必要」と訴えました。
患者の声協議会では2007年の発足以来、基本法の制定を目指して延べ4回の勉強会を開き、今年4月には医療政策実践コミュニティー・医療基本法チーム(H−PAC)や患者の権利法をつくる会の他2団体とも連携し、「医療基本法共同骨子」を策定しました。
今回の総選挙にあたっては、12政党に基本法の制定や患者の参画についてアンケート調査を実施するなど、活発な活動を展開してきました。
伊藤氏はこうした患者の声協議会の活動状況を説明しながら、多様なステークホルダーが関係する医療政策について国民的な合意形成を図るには「医療基本法の制定が必要であり、私たちは患者・市民の立場から医療提供側にも理解を求めたい」と話しました。
質疑応答では、参加者から「検討委員会の提言には“患者の権利”は明記されているが、“医療提供側の権利”はなく、公平とは言えない」「医療提供側と患者側が“平等”というのはあり得ないのではないか」「患者側にも果たすべき“責務”がある」など、医療提供側の本音をのぞかせる質問が相次ぎました。
これに対して、大井氏は「患者は医療側よりは弱者であり、その権利を保障する必要はある」と答えました。また、権利法をつくる会の鈴木利廣弁護士が発言に立ち、「これまでの医療政策は民業を政府が規制する仕組みだったが、今後は高い公共性を目的に再構築する必要がある。そのためには、患者側と医療側は対立関係にあるのではなく、協力関係にあるべきだ」と述べました。 |