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活動経緯

2016年5月28日 第35回勉強会
「患者申し出療養」の是非を問う
霜鳥、天野両氏が問題点など指摘

 5月28日、東京・中野サンプラザ研修室で、第35回勉強会を開きました。テーマは「『患者申し出療養』の是非を問う」。患者申し出療養は、国内では承認されていない抗がん剤治療などを保険診療と併せて受けられる制度で、4月から始まったものの、制度決定のプロセスに問題がありました。導入の経緯と課題について、講師2人にお話をいただき、制度の抱える問題を討論しました=写真。

 まず、健康保険組合連合会の霜鳥一彦参与に、制度導入前の状況から、政府の規制改革会議で保険診療と保険外診療を組み合わせる「混合診療」の枠が次第に広がっていった経緯について、お話をいただきました。さらに、患者申し出療養制度は2013年から15年にかけ、規制改革会議で政府のトップダウンによって議論が始まり、15年6月の第2次答申で導入を目指すことが決まり、厚生労働省の中央社会保険医医療協議会(中医協)で具体的な仕組みがまとまったとのことでした。

 続いて、制度導入で新たに設置された「患者申し出療養評価会議」の構成員で、患者団体の一般社団法人「全国がん患者団体連合会」の天野慎介理事長が、制度の詳しい説明と課題について指摘しました。導入の決定過程では、15年8月に患者代表として中医協のヒアリングを受け、@患者申し出療養制度が国民皆保険のなし崩し的な空洞化につながらないようにすること、A対象となる治療薬などの有効性と安全性に十分配慮しつつ、患者が利用しやすい制度とすること―-などの意見書を提出したものの、患者の声を十分に反映する機会がなかったことを振り返りました。

 この後、霜鳥氏、天野氏のほか、当協議会の伊藤雅治副代表世話人が加わり、埴岡健一当協議会世話人がコーディネーターとなり、討論しました。霜鳥氏が「今回は官邸のリーダーシップで『まず制度を作る』という方針があり、現場からの声で作るという流れではなかった」と指摘。天野氏も中医協では「患者が『申し出る』という謙譲語を使っている制度名自体がおかしく、患者視点ではない」と指摘し、中医協の委員から「もっと早く患者の意見を聞いていればよかった」などの意見が出たことが紹介されました。

 また、伊藤氏は「政策決定のプロセスに問題があった。もっと早い段階で患者が加わるべきだった」と指摘、埴岡氏は「官邸主導で政策決定過程がシンプルになってきた分、内容は揺らぎやすくもなっている。こうした中、患者側はスピーディーに対応することが必要になってきている」と提示しました。参加者からは「小泉政権と同じように規制改革会議に引っ張られている」「患者が参加して決まった感じが全くなかった」などの意見が出ました。

 効果は高いものの高額な医薬品が保険適用され、国家財政への影響が指摘される中、こうした「混合診療」は今後も大きな課題となります。このため、伊藤氏は「医療は有効性と安全性だけでなく、経済性も考える必要が出てきている。患者の立場でどうすべきかを考えておく必要がある」と指摘しました。