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活動経緯

2017年6月25日 第41回勉強会
「慢性疼痛対策を考える〜“痛み”は我慢すべきものか〜」
従来の医療体制の枠組みでは不十分

  第41回勉強会「慢性疼痛対策を考える〜“痛み”は我慢すべきものか〜」を6月25日、東京・中野サンプラザで開きました。日本の医療で慢性疼痛対策はな じみの薄い分野であることから、この日は文部科学省高等教育局医学教育課企画官の佐々木昌弘さん=写真左=と横浜市立大学付属市民総合医療センター准教授 (ペインクリニック)の北原雅樹さん=同右=の専門家2人を講師に迎え、貴重なお話を聞きしました。
 佐々木氏は、慢性疼痛に対する標準的な評価法や診断法はまだ確立されておらず、診療体制も不十分だが、患者の生活の質を低下させ、就労困難などの社会的 損失が大きいことから、政府も対策に乗り出し、昨年6月に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」や6月に閣議決定した今年の「骨太の方針」の中に、慢 性疼痛対策の取り組み推進が明記されたことなどを挙げました。
 また、文科省としても医師らの人材が不足している領域であることから、モデル大学を公募し、今年からは全大学に診療科を超えた総合教育の充実を要請するなど、人材育成に力を入れはじめたことを解説しました。
 北原氏は、「日本は痛み医療の最貧国」というドラスティックなテーマを掲げ、痛みを感じる生理、慢性痛の定義、急性痛と慢性痛の治療法の違いなどを詳しく説明しました。
 そのうえで、日本の場合はまだ「システム」と呼べる体制は整っておらず、大学病院でもペインクリニックを毎日開いている病院は少ないこと。人材も資金も 大幅に足りないことなどから、「学際的痛みセンター」の構築が必要であり、そこでは臨床面だけでなく、教育や研究も含めた拠点とする必要があることなどを 強調しました。

 この後のパネルディスカッション=写真下=に先立って難治性疼痛患者支援協会ぐっどばいペインの副代表理事の浅枝まり 子さんが、NHKで放映された海外の取り組み事例を紹介し、適正なプログラムを通じてリハビリをすれば治るケースが多いことを力説しました。同会では議員 立法による制度化を目指しています。
 北原氏は医療実践者の立場から、「まずは地域から変えていくことが重要。実際に効果が上がっているところを実証して、社会全体のモデルケースにすること。私もそれを目的に、4月に東京慈恵医大から横浜市立大に移った」と述べました。
 佐々木氏は行政の立場から、「道具立てはかなりそろってきたとは思う。立法化も含め更に展開するには“風”にどう乗せるかが重要で、患者会の運動やマスメディアの報道が重要なカギになる」と述べ、政策の実現に向けて国民的機運を盛り上げることが必要と強調しました。