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活動経緯

日野名誉教授が講演、患者の声・協議会から海辺氏
民主、公明、共産各党から国会議員らも
2010年10月30日 シンポ「医療基本法の制定を!」

 医療基本法制定推進フォーラム主催のシンポジウム「医療基本法の制定を!」が10月30日、東京・明治大学駿河台キャンパスで開かれました。このシンポには患者の声・協議会も参画し、当協議会にとっては9月4日に開いた「今こそ医療基本法を」に次ぐ第2弾シンポ&勉強会になります。当日は折からの台風14号が関東を直撃。終日、激しい雨に見舞われましたが、100人を超える参加者が講演やパネリスト発言に熱心に耳を傾け、駆けつけた国会議員らと活発な質疑応答が交わされるなど、基本法制定に向けた熱気あふれる1日となりました。(文責・本間俊典)

 この日の発言者などは以下の通りです。


東北大学名誉教授 日野 秀逸氏

【基調講演】
「医療基本法はなぜ必要か」
東北大学名誉教授 日野 秀逸氏
【パネラー】
がんと共に生きる会副理事長 海辺 陽子氏
済生会栗橋病院副院長 本田  宏氏
日本医師会前常任理事 飯沼 雅朗氏
東京都看護協会会長 嶋森 好子氏
自治医科大学教授 尾身  茂氏
読売新聞医療情報部長 田中 秀一氏
【参加国会議員など】
小西洋之氏(民主・参院議員)
高木美智代氏(公明・衆院議員)
小池晃氏(共産・政策委員長)

 基調講演に立った日野氏は、欧州における患者の権利の法整備、戦後日本における医療側と患者側の関係の変化などを紹介。「医療は国民生活にも行政にも重要な分野でありながら、ここ数年、国民の切実な需要に応え切れない制度のほころびが目立っている。国民・患者の権利を基本に据えた法体系の整備が必要であり、その中心となるべきなのが医療基本法だ」と述べ、「医療側と患者側の信頼関係を構築する基本法」の重要性を強調しました。
日野氏の講演詳細はこちら

海辺氏「客観データに基づいた議論を」

 続いて、この日のシンポを企画した鈴木利廣・「患者の権利法をつくる会」世話人が、パネラー6人を紹介し、6人が各自の属する組織の取り組みなどを説明。患者の声・協議会を代表して、海辺氏は「医療を受ける立場から〜かけがえのない命を守りたい」というテーマで、国民が納得できる医療の前提として、1医療制度の維持・継続に向けた国民の納得、2国民のほとんどを占める「普通の人」が共感できる議論、3客観データに基づいた冷静な議論、の3点が必要と指摘しました。
  さらに、当協議会が医療基本法の制定にあたって求めている、1すべての人への質の高い医療の提供、2医療は公共財という認識に立った資源確保・配分、3EBMにのっとった最適・最善の医療確保、4医療政策の決定過程への国民の参加、の4点を紹介。「誰かの犠牲の上に立つものでなく、みんながハッピーになる基本法を」と呼びかけました。

 続いて、本田氏は病院医師の立場から、「近年の医療費抑制の結果、日本の医療はガラパゴス化した」と指摘し、「これでは国民の命は守れない」と訴えました。飯沼氏は医師の応召義務や患者への告知における医師側の負担の大きさなどを強調。インフルエンザのワクチン接種時にみられた患者側の無理解を事例に挙げながら、「(患者の責務も明確にした)医療基本法が必要」と述べました。

 嶋森氏は、現行医療法が医療提供体制のあり方などを規定しているのに対して、「医療基本法では国民自らが健康の保持・増進にどのような責務を果たすか、そのための医療体制の検討に参加する義務と権利を保障することが必要だ」と述べました。

 尾身氏は、問題の背景に1あるべき医療・介護の姿に関するグランドデザインの欠如、2国民の医療ニーズと医師の職業人としての自由に関する哲学の欠如、の2点を挙げ、「国民的議論を通じて、医療人育成と医療供給体制の対策で合意し、基本法を制定すべきだ」と述べました。

 田中氏は、医療事故の新聞記事件数の推移などを示したうえで、医療基本法では、1患者の権利の保障、2医療供給態勢の保障、「医療は公共財」と明示、の2点が眼目になるべきだ、と強調しました。

小西氏「民主党議連で検討したい」

 参加した国会議員らからは「患者の声・協議会の勉強会に参加して党に戻って検討した結果、昨年の衆院選、今年の参院選のマニフェストに医療基本法の制定を盛り込んだ」(公明・高木氏)、「党内の議員連盟で医療や社会保障のグランドデザインをどう描くか、検討したい。政策調査会内に医療基本法を考えるワーキンググループを立ち上げたい」(民主・小西氏)、「06年のがん対策基本法は超党派で成立させたが、あの経験が大切だ。医療基本法では、憲法25条に基づいた理念に基づき、日本の医療をどう作っていくかという視点が欠かせない」(共産・小池氏)といった意見表明がありました。また、自民、社民、みんなの党、共産の各党議員からメッセージが寄せられました。
(なお、飯沼、嶋森両氏の発言はそれぞれ日本医師会、都看護協会の見解ではないというお断りがありました)