第50回勉強会「見える化データで地域を診断」を2020年2月2日、東京・中野サンプラザで開きました。折からの新型肺炎騒動などで参加者は20人弱のこぢんまりした勉強会になりましたが、参加者全員と講師のやり取りができ、充実した内容になりました。

初めに、昨年9月1日に亡くなった患者の声協議会の生みの親、伊藤雅治氏に黙とうを捧げ、長谷川三枝子代表世話人が「伊藤さんの遺志を継ぎ、会の活動を充実させていきたい」とあいさつしました。この日の講師は埴岡健一・当協議会世話人と前村聡・日本経済新聞社会部記者(次長)の2人=写真。

埴岡氏は、最近注目されている医療のビッグデータ「NDB-SCR」について、その意義と使い方を解説。NDB-SCRは、厚生労働省が公表しているレセプト情報などを集約したNDB(ナショナル・データベース)を活用し、診療行為と薬剤の地域差を性・年齢調整済みのスコア(SCR)として算出することで、医療提供状況の地域差を「見える化」できる画期的なもので、東北大学の藤森研司教授が提供したデータを内閣府がHPに掲載しています。

NDB-SCRでは診療行為、薬剤薬効などが都道府県別、二次医療圏別、市町村別に出ていて、これらを利活用することにより、地域医療構想会議などの場で、エビデンス「科学的事実」に基づいた議論や対策立案が可能になります。埴岡氏は、各種がんの手術実績などのデータを具体的に示して、使い方を解説。各地域医療の質、利便性、医療費の過不足などを読み取るノウハウや、データのクセや限界なども合わせて解説しました。

前村氏は、NDB-SCRなどの「見える化」サイトの充実により、情報公開が進んできたものの、今度は情報の氾濫で患者・国民が“溺死”する懸念も出てきたことを指摘。それを避けるには、「自分はどうなりたいのか?」という最終アウトカム(成果)からロジックモデル(ある施策の目的達成に至るまでの論理的な因果関係を明示したもの)を活用する方法を提示しました。

事例として、高血圧や高コレステロールの人が脳梗塞で死亡するデータを東京23区で比較したほか、多くの人が望む「大往生(老衰死)」はどの地域が多いかなどを解説。データ分析から「老衰死の多い地域は医療費が少なくて済む可能性がある」とまとめた日経新聞の記事を紹介して、有用な活用方法を披露しました。分析結果を地域医療計画などに照らして、自分に必要な医療施策を考えることなどを提案しました。

【内閣府の医療提供情報の地域差】
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/mieruka/tiikisa.html
【藤森教授のHP】
https://public.tableau.com/profile/fujimori#!/